2015-01-01から1年間の記事一覧
僕は扉を開けて、家の中に入った。 ただいまー。 部屋は明るかったが、返事が返ってこない。 食卓には夕食が準備されていたが誰もいない。 寝室を覗くと、妻が娘を寝かしつけていた。 僕は何も言わず、静かに寝室の戸を閉めた。 気遣いする余裕などなかった…
魔法のほうきが壊れてしまい、公園で寝泊まりしていた魔術師が居候したいと言って僕についてきてしまった。 ついこの間に偶然会ったばかりの怪しいオジさんを一時的にも家に住まわせるとなると、妻はまず許してくれないだろう。 でも、どこにも戻る場所がな…
僕は魔術師が落としていった「金持ち父さん貧乏父さん」をすべて読んでしまった。 久しぶりに時間を忘れてしまうほど読書に没頭した。 お金に対して素直になっていいんだということ。 大切なことを気づかせてくれた。 僕は数日後、インターネットからファイ…
外は真っ暗で静まりかえっていた。車も人通りもまったくない。 僕はラーメン屋を出たところで、偶然にも魔術師ロバの落としていった本を拾ったのだ。 彼がわざと落としていった可能性も否定できない。 でもこの「魔術師ロバの所有物。触るべからず」と裏表紙…
どのような仕事をして、これからの人生を歩んでいくべきなのか僕には全く分からなかった。 魔術師も呆れてしまったのか、黙り込んでしまった。 僕が困っているのを察してか、彼はこう言ってきた。 無気力か?自分? そんなんで人生楽しいか?確かにいまの状…
魔術師と名乗るこの老人は、仕事からは逃れられないと僕に説いてきた。 そして立て続けに難しい質問を投げてきた。 んで、どうやったら仕事を続けていくことができると思う? 考えつかないよ。仕事をしていたらストレスが溜まるばかりだから。ストレスを 溜…
自分の事を魔術師と名乗るこの老人は、僕に対して仕事を辞めることを勧めてきた。 僕には予想もしていなかった助言だった。 あれだけ苦しんだ就職活動。 ようやく雇ってもらえた新人サラリーマンにそのアドバイスはないだろう。 (半分冗談なんだろうけど、い…
ラーメン屋の明かりに照らされて、ようやくはっきりとこの魔術師の姿を見ることができた。 中肉中背の老人。 そしてなんと古びた紫色のローブを着用していた。 本当の魔術師みたいだ。 くすんだ紫色のとんがり帽子をかぶり、白髪交じりの赤髪は腰まで伸びて…
その日は娘の3回目の誕生日だった。 僕は朝にそのことを上司に説明し、定時に帰らせてもらうため相談をした。 彼はびっくりした顔をしていた。 おそらく社会人は、こういった事を定時に帰る言い訳にしないのだろう。 そして彼は嫌みっぽくこう言った。 「ち…
就職先が決まった僕は新たなる希望に溢れていた。 これから日本の社会で大暴れをして、近い将来にこの会社のトップまで上り詰める… そんな野望を抱いて社会人がスタートした。 しかし現実はそんなに甘くなかった。 まず、27歳になってようやく社会人デビュー…
まるで江戸湾に黒船で現れた(かった)ペリーのような気分で意気揚々と帰国したのは去年の夏。 1年たったら、このざまだ。 焦りと劣等感で押しつぶされそうだった。 何とか大学は卒業できたが、職が決まっていなかった。 これから就職活動がスタートという状…
僕の名前はゲムちゃん。27歳の男性。妻子あり(同い年の妻と2歳の娘)。 最近、生まれて初めて社会人デビュー果たした。 雇用形態はもちろん契約社員。 新卒で雇ってもらえず中途採用だ。 どこからか「27歳で社会人デビューって、ちょっとおかしくない?結婚も…